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健康診断・がん検診・プライベート健診―「たくさん受けること」が健康につながるとは限りません―


「念のため、できる検査は全部受けておいた方がいいですか?」

「がんは早く見つけるほど良いのだから、毎年いろいろ検査した方が安心ですよね?」


診療をしていると、このようなご相談を受けることがあります。


最近では、全身MRIやPET検査、人間ドックに近いプライベート健診なども目にする機会が増えました。


一方で、


「何を受けたらよいのか分からない」

「検査は多いほど安心なのだろうか」


と迷われる方も少なくありません。


結論から言うと、健康診断やがん検診は「多ければ多いほど良い」というものではありません。


大切なのは、年齢、性別、家族歴、生活習慣、既往歴などに応じて、自分にとって意味のある検査を適切なタイミングで受けることです。


予防医療の目的は、病気を片端から探すことではありません。


将来の心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、一部のがんなどのリスクを下げ、健康に過ごせる時間を延ばすことにあります。



オーストリアの健康診断(Vorsorgeuntersuchung)とは?


オーストリアでは、18歳以上の方を対象に、年に1回無料で受けられる健康診断(Vorsorgeuntersuchung)があります。


詳細については以前の記事


でご紹介しましたので、ここでは簡単に触れます。


この制度の中心は、がんを探すことではなく、

·       高血圧

·       糖尿病

·       脂質異常症

·       心血管疾患

などのリスクを早めに見つけることです。


血圧、体重、腹囲、血液検査、生活習慣などを総合的に確認し、将来の病気を予防するために活用します。



健康診断で本当に大切なこと


健康診断は受けること自体が目的ではありません。


例えば、


·       血圧が少し高い

·       LDLコレステロールが高い

·       血糖値が境界域

·       肝機能が少し悪い


という結果が出た場合、


そこで終わりではなく、


·       食生活の見直し

·       運動習慣の改善

·       禁煙

·       体重管理

·       再検査

·       必要に応じた治療


につなげることが大切です。


健康診断は「結果をもらうイベント」ではなく、「健康を見直すきっかけ」と考えるとよいかもしれません。



がん検診は受ければ受けるほど良い?


がん検診は非常に大切です。


ただし、


「すべてのがんを、毎年、できるだけたくさん調べる」


ことが必ずしも最善とは限りません。


検診には利益だけでなく、不利益もあります。



偽陰性


実際には病気があるのに、検査で異常なしと判断されることがあります。

検査には限界があります。

そのため、

「半年前に検査で異常なしだったから大丈夫」

とは言い切れません。

体重減少、血便、血尿、長引く咳、不正出血、しこりなどの症状がある場合は、検診ではなく診察が必要です。



偽陽性


病気ではないのに異常が疑われることがあります。


その結果、


·       再検査

·       CT

·       MRI

·       内視鏡

·       生検

などが必要になることがあります。


最終的に何もなかったとしても、その間の不安は大きなものです。



過剰診断


見つかった病変の中には、生涯にわたって問題にならなかった可能性のあるものもあります。

しかし、一度見つかると追加検査や治療につながることがあります。

医学的には、

「見つけること」

だけでなく、

「見つけることで本当に健康上の利益があるか」

も重要になります。



オーストリアでまず意識したい検診


がん検診については、それぞれ別の記事で詳しくご紹介しています。


乳がん検診


オーストリアでは45〜74歳の女性に対し、2年ごとのマンモグラフィ検診が推奨されています。


大腸がん検診


大腸がんは予防できる可能性のあるがんです。

便潜血検査や大腸内視鏡が重要になります。



胃がん・ピロリ菌


日本人はオーストリア人と比べて胃がんのリスクが高いことが知られています。

特にピロリ菌感染歴がある方は、一度確認しておく価値があります。



HPVワクチンと子宮頸がん


HPVワクチンは、子宮頸がんだけでなく、男女のHPV関連がんの予防につながる重要なワクチンです。



低線量CT(Low-Dose CT)はどう考える?


最近、

「肺がんが心配なのでCTを受けたい」

というご相談もあります。


CTはレントゲンより詳しい情報が得られる一方で、放射線被ばくを伴います。


ただし、長期間の喫煙歴がある方では、


低線量胸部CT(Low-Dose CT)


による肺がん検診が有効であることが分かっています。


研究では、肺がんによる死亡率を下げる効果も報告されています。


一方で、

症状のないすべての方が毎年胸部CTや腹部CTを受けることが推奨されているわけではありません。


対象となる年齢や喫煙歴によって利益と不利益が変わるため、個別に判断することが重要です。



全身MRIやPET検査は必要?


ウィーンでも、


·       全身MRI

·       PET-CT

·       プライベート健診


を提供する医療機関があります。


こうした検査が有用な場面は確かにあります。


例えば、

·       症状がある場合

·       特定の病気が疑われる場合

·       強い家族歴がある場合

·       専門医が必要と判断した場合


です。


しかし、

「何か隠れていないか心配だから」

という理由だけで毎年広範囲の検査を受けることについては、利益だけでなく不利益も考える必要があります。


偶然見つかった影(偶発所見)がきっかけとなり、追加検査や不安につながることもあります。



腫瘍マーカーだけでがんは見つかる?


「血液検査でがんが分かりませんか?」

という質問もよく受けます。


残念ながら、現在のところ、


腫瘍マーカーだけで健康な人のがんを効率よく見つけることはできません。


腫瘍マーカーは、


·       がんがあっても正常

·       がんがなくても上昇

することがあります。


そのため、一般的な健康な方の「がん探し」として万能な検査ではありません。



まとめ


診療をしていると、

「できる検査は全部受けた方が安心ですよね」

と言われることがあります。


けれど予防医療は、検査の数を増やすことが目的ではありません。


自分の年齢や生活習慣、家族歴に合わせて、


意味のある検査を、意味のあるタイミングで受けること。


そして、その結果を今後の生活や治療につなげること。


それが本来の予防医療だと思います。


ウィーンには、Vorsorgeuntersuchungをはじめ、質の高い予防医療の仕組みがあります。


まずは年に一度、ご自身の健康状態を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

検査を増やすことよりも、


「自分に必要な予防医療を知ること」


の方が、長い目で見れば大きな意味を持つかもしれません。

 

「自分にはどの検査が必要なのだろう」

「日本で受けた人間ドックや健康診断の結果は、どう考えればよいのだろう」


そんなふうに迷うこともあるかもしれません。


実際の診療でも、日本で受けた人間ドックや健診結果を持参される方は少なくありません。

日本とオーストリアでは、健診制度や検査の考え方、推奨される検査の内容が異なることもあります。


また、日本語の検査結果や紹介状を、現地の医療機関でどのように活用したらよいか迷われる方もいらっしゃいます。


私自身、日本とオーストリア両方の医療制度に触れてきた経験から、検査結果を日本語で一緒に整理し、必要に応じてオーストリアでの追加検査や専門医受診につなげるお手伝いをしています。


この文章が、ご自身やご家族の健康について少し立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。

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