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胃がんも「予防の時代」へ―ピロリ菌・胃カメラ・今知っておきたいこと―


「昔、ピロリ菌がいると言われたことがある」

「胃カメラで慢性胃炎と言われた」

「除菌をすすめられたけれど、そのままになっている」


このようなお話を、診療の中で伺うことがあります。


一方で、特に症状がないと、


「今さら治療した方がいいのかな?」

「胃の調子も悪くないし、大丈夫かな」


と思われる方も少なくありません。


ピロリ菌は、症状がはっきり出ないことも多いため、つい後回しになりやすいものです。


けれども、胃の健康を長い目で考えるうえでは、一度きちんと確認しておくことが大切な場合があります。



ピロリ菌とは?


ピロリ菌、正式には Helicobacter pylori は、胃の粘膜に住みつく細菌です。


多くの場合、幼少期に感染すると考えられています。

日本では、特に以前の世代で感染している方が比較的多く、若い頃や健診、胃カメラの際に「ピロリ菌がいる」と言われたことがある方もいらっしゃいます。


感染していても、必ず胃痛や胃もたれが出るわけではありません。

そのため、検査を受けるまで気づかないこともあります。



なぜピロリ菌が問題になるのでしょうか


ピロリ菌は、長い時間をかけて胃の粘膜に慢性的な炎症を起こすことがあります。


その結果として、


・慢性胃炎

・胃潰瘍

・十二指腸潰瘍


などの原因になることがあります。


そして近年、特に重要と考えられているのが、胃がんとの関連です。


ピロリ菌感染は、胃がんの大きなリスク因子の一つとされています。また、一部の胃の悪性リンパ腫、特に胃MALTリンパ腫との関連も知られています。


もちろん、ピロリ菌に感染している方すべてが胃がんになるわけではありません。


ただ、将来のリスクを下げるために、感染があるかどうかを確認し、必要に応じて治療を考えることは大切です。



「症状がないから大丈夫」とは限らないことも


ピロリ菌に感染していても、


・胃痛

・胸やけ

・胃もたれ

・食欲低下


といった症状がほとんどないことがあります。


そのため、


「特に困っていないから」

「昔言われたけれど、そのままになっている」


という方も少なくありません。


けれども、胃の粘膜では、気づかないうちに慢性的な炎症が続いていることがあります。症状の有無だけでは、胃の状態を正確に判断できない場合があるのです。



胃がんも「予防」を考える時代へ


以前は、胃がんというと「見つけて治療する病気」という印象が強かったかもしれません。


現在では、ピロリ菌を除菌することで、将来の胃がんリスクを下げられることが分かってきています。


もちろん、除菌をすれば胃がんを完全に防げる、というわけではありません。特に、長い間炎症が続いていた場合には、萎縮性胃炎や腸上皮化生といった胃粘膜の変化が残ることがあります。


それでも、胃がん予防の観点から、ピロリ菌感染をそのままにしないことは、とても大切だと考えられています。


特に、


・慢性胃炎を指摘されたことがある

・胃潰瘍や十二指腸潰瘍になったことがある

・ご家族に胃がんの方がいる

・過去にピロリ菌を指摘されたが、除菌したか分からない


という方は、一度確認してみることをおすすめします。



どのように検査するのでしょうか


ピロリ菌の検査には、いくつかの方法があります。


当院では、状況に応じて、


・便検査

・血液検査

・必要に応じた胃カメラの手配


を行っています。


便検査では、現在ピロリ菌がいるかどうかを調べます。


治療後に、除菌がうまくいったかを確認する際にも使われることがあります。


血液検査では、ピロリ菌に対する抗体を調べます。ただし、血液検査は「過去に感染していたこと」を反映する場合があり、現在もピロリ菌が残っているかどうかの判断には注意が必要です。


そのため、検査結果だけを一つずつ見るのではなく、これまでの胃カメラの結果、除菌治療の有無、現在の症状、内服中のお薬などをあわせて判断していきます。


胃の症状が続いている場合や、貧血、体重減少、黒い便などがある場合には、胃カメラが必要になることもあります。その際には、必要に応じて消化器専門医へのご紹介や内視鏡検査の手配を行います。


どのような治療をするのでしょうか


ピロリ菌が確認された場合には、除菌治療を検討します。


一般的には、胃酸を抑える薬と複数の抗菌薬を組み合わせて、通常10〜14日程度内服します。使用する薬は、過去の除菌歴、抗菌薬アレルギー、地域の抗菌薬耐性、内服中のお薬などによって変わります。


オーストリアでは、例えば Pylera® などのビスマスを含む治療薬が使われることがあります。この場合、通常は胃酸を抑える薬と組み合わせて、10日間内服します。


除菌治療は、薬の種類や飲み方が少し複雑なこともあります。分からないことがあれば、遠慮なく確認しながら進めることが大切です。


また、自己判断で抗菌薬を使用したり、中断したりすると、治療がうまくいかないことがあります。処方された場合には、指示された期間、きちんと飲み切ることが大切です。



治療後には確認検査が大切です


除菌治療を受けたあとは、ピロリ菌がきちんと消えたかどうかを確認します。


当院では、主に便検査などを用いて、除菌後の確認を行います。一般的には、治療終了後、少なくとも4週間以上あけて確認します。


胃酸を抑える薬や抗菌薬を使っている場合には、検査結果に影響することがあります。そのため、検査のタイミングや内服薬については、事前に確認しながら進めます。


「薬を飲んだから終わり」ではなく、本当に除菌できたかを確認するところまでが大切です。



胃カメラが必要になることもあります


ピロリ菌を除菌しても、胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。


特に、長い間胃の炎症が続いていた方では、胃粘膜の変化が残っていることがあります。そのため、胃の状態によっては、胃カメラによる経過観察がすすめられることがあります。


特に、


・胃の痛みが続く

・胃もたれが長引く

・食欲が落ちている

・体重が減ってきた

・貧血を指摘された

・黒い便が出る

・吐血がある

・飲み込みにくい

・嘔吐が続く


といった症状がある場合には、早めに相談することが大切です。


日本では、胃がん検診として胃カメラや胃部X線検査を受ける機会があります。一方で、オーストリアでは日本と同じような胃がん検診制度は一般的ではありません。


そのため、ウィーンで生活されている方は、年齢、症状、ピロリ菌感染歴、慢性胃炎の程度、家族歴などを踏まえて、必要に応じて消化器専門医と相談していきます。


当院では、必要に応じて消化器専門医へのご紹介や、胃カメラの手配についてもご相談いただけます。



こんな方は一度ご相談ください


次のような方は、一度確認してみることをおすすめします。


・過去にピロリ菌を指摘されたことがある

・除菌したかどうか覚えていない

・慢性胃炎と言われたことがある

・胃潰瘍や十二指腸潰瘍になったことがある

・ご家族に胃がんの方がいる

・胃の不調が続いている

・日本で検診を受けていたが、オーストリアに来てから胃の検査を受けていない


「こんなことで相談していいのかな」と思われる内容でも大丈夫です。

昔の検査結果やお薬の記録があれば、それを一緒に確認しながら、今できることを考えていきます。



まとめ


ピロリ菌は、症状がないまま長く経過することがあります。


一方で、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、そして胃がんなど、さまざまな胃の病気と関係していることが分かっています。


「昔、ピロリ菌と言われた気がする」

「除菌したかどうか分からない」

「胃カメラで慢性胃炎と言われたままになっている」


そんな方は、一度ご自身の胃の状態を振り返ってみてもよいかもしれません。


不安をあおるためではなく、将来の健康を守るために、今できる確認をしておく。それが、胃がん予防につながることがあります。


当院では、必要に応じてピロリ菌の便検査・血液検査、除菌治療、治療後の確認検査、胃カメラの手配、消化器専門医へのご紹介についてご相談いただけます。


気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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