脂質異常症とは?―「コレステロールが高いですね」と言われたら、どう考えればよいのでしょうか―
- Dr. Rie Iwaki

- 11 時間前
- 読了時間: 7分
健康診断で
「コレステロールが高めですね。」
「LDLコレステロールが高いです。」
と言われたことはありませんか。
一方で、
「自覚症状はないし、様子を見ても大丈夫かな。」
「薬はできれば飲みたくない。」
というお気持ちをお持ちの方も少なくありません。
診療をしていても、
「まだ元気だから。」
「食事に気を付ければ大丈夫ですよね。」
というご相談をよく受けます。
脂質異常症は、症状がないまま進行することが多い病気です。
だからこそ、不安になりすぎる必要はありませんが、正しく知っておくことが大切です。
今回は、脂質異常症について現在の考え方をまとめてみたいと思います。
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脂質異常症とは?
脂質異常症とは、
血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れた状態です。
主に問題となるのは、
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
中性脂肪(トリグリセリド)
です。
健康診断では、
これらをまとめて「脂質」として評価します。
「悪玉」「善玉」という名前だけではありません
LDLは「悪いコレステロール」そのものではありません。
本来、コレステロールは
細胞
神経
ホルモン
を作るために必要な物質です。
問題は、
LDLが多くなりすぎることです。
余分なLDLが血管の壁に入り込むことで、
少しずつ動脈硬化が進んでいくことが分かっています。
自覚症状がほとんどありません
脂質異常症そのものでは、
ほとんど症状はありません。
だからこそ、
健康診断で偶然見つかることが多い病気です。
しかし、
症状がない間にも、
血管では少しずつ変化が進むことがあります。
放置するとどうなるのでしょうか
脂質異常症で最も心配なのは、
動脈硬化
です。
動脈硬化が進むことで、
心筋梗塞
狭心症
脳梗塞
末梢動脈疾患
などのリスクが高くなります。
一方で、
「LDLが少し高いだけだから必ず病気になる」
というわけでもありません。
重要なのは、
その人全体のリスク
です。
LDLだけでは判断しません
最近のガイドラインでは、
「LDLが〇〇だから薬」
という考え方ではありません。
例えば、
年齢
血圧
糖尿病
喫煙
腎臓病
心血管疾患の既往
家族歴
などを総合的に評価して、
治療目標を決めます。
つまり、
同じLDL値でも、
治療方針は人によって異なります。
日本人はやせていても安心ではありません
「太っていないから大丈夫。」
と思われる方もいます。
しかし、
日本人を含む東アジア人では、
体格だけでは判断できません。
また、
遺伝による
家族性高コレステロール血症(FH)
という病気が隠れていることもあります。
特に、
若いうちからLDLが非常に高い方や、
ご家族に若くして心筋梗塞になった方がいる場合は、
一度相談することをおすすめします。
食事だけで改善できますか?
よくいただく質問です。
もちろん、
食生活は大切です。
一方で、
遺伝的な影響も大きいため、
食事だけでは十分下がらない方もいます。
「努力が足りない」
ということではありません。
食事で意識したいこと
最近では、
「○○を食べればコレステロールが下がる」
というより、
食事全体のバランスが重要と考えられています。
例えば、
おすすめなのは、
野菜
豆類
果物
全粒穀物
ナッツ
オリーブオイル
魚
を中心とした食事です。
一方、
加工肉や超加工食品、飽和脂肪酸の多い食品は摂りすぎに注意しましょう。
また、以前は「卵は控えた方がよい」と言われることもありましたが、現在では多くの方にとって卵だけを極端に制限することは勧められていません。食事全体の質を見直すことの方が重要です。
ゆっくり食べることも大切です
食事内容だけでなく、
食べ方も健康に影響します。
急いで食べるよりも、
よく噛み、
味わいながらゆっくり食べることで、
食べ過ぎを防ぎやすくなります。
一口20回程度噛むことを目安にしてみるのもよいでしょう。
「何を食べるか」だけでなく、
「どのように食べるか」
も健康的な生活習慣の一つです。
運動は「特別なこと」でなくても大丈夫
運動は、
HDLコレステロールや中性脂肪の改善だけでなく、
血圧や血糖、体重管理にも良い影響があります。
「毎日ジムへ行かなければ」
ではありません。
まずは、
一駅歩く
階段を使う
散歩を習慣にする
など、
続けられることから始めることが大切です。
薬を始めると一生やめられない?
これもよく聞かれる質問です。
答えは、
必ずしもそうではありません。
薬が必要になるかどうかは、
心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを総合的に考えて判断します。
生活習慣の改善で十分コントロールできる方もいますし、
一方で、
リスクが高い方では、
早めに薬を開始した方が将来の病気を防げることもあります。
「薬を飲むこと」が目的ではなく、
将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防することが目的です。
図① 健康診断で見る脂質の見方
項目 | 役割 | 一般的な目安* |
LDLコレステロール | 動脈硬化の原因となる主要な脂質 | 140 mg/dL未満(健診判定の目安) |
HDLコレステロール | 余分なコレステロールを回収する | 40 mg/dL以上 |
中性脂肪(TG) | エネルギー源。高値では心血管リスクや脂肪肝とも関連 | 空腹時150 mg/dL未満 |
*健康診断でよく用いられる目安です。治療目標は心血管リスクによって異なります。
図② LDLコレステロールの治療目標
最近の治療では、
「LDLが何mg/dLだから薬」
ではなく、
その人の心血管リスクに応じて目標値を決める
という考え方になっています。
リスク | LDL目標値 |
超高リスク(心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患など) | 55 mg/dL未満 |
高リスク(糖尿病・CKD・著しい危険因子など) | 70 mg/dL未満 |
中等度リスク | 100 mg/dL未満 |
低リスク | 116 mg/dL未満 |
「健康診断で140 mg/dL未満だから安心」というわけではなく、すでに心筋梗塞や糖尿病などがある方では、さらに低い目標値を目指すことがあります。
最近注目されている「Lp(a)(リポ蛋白(a))」とは?
近年、心臓病の分野で特に注目されているのがLp(a)(リポ蛋白(a))です。
これはLDLコレステロールとは異なる種類の脂質で、動脈硬化や大動脈弁狭窄症のリスクを高めることが分かっています。
特徴は、
ほとんど遺伝で決まる
食事や運動ではほとんど変化しない
通常の健康診断では測定されない
という点です。
そのため、欧州心臓病学会(ESC/EAS)は、
すべての成人が生涯に一度はLp(a)を測定することを検討する
ことを推奨しています。
特に、
若くして心筋梗塞や脳梗塞になったご家族がいる
LDLコレステロールはそれほど高くないのに動脈硬化が進んでいる
家族性高コレステロール血症(FH)が疑われる
という方では、一度測定する意義があります。
現時点ではLp(a)を直接下げる治療薬は一般診療ではまだ広く使用されていませんが、高値であることが分かれば、LDLコレステロールや血圧、糖尿病など他の危険因子をより積極的に管理することが重要になります。
こんなときは相談をおすすめします
健康診断でLDLが高いと言われた
中性脂肪が高い
HDLが低い
家族に若くして心筋梗塞になった方がいる
糖尿病や高血圧もある
生活習慣を見直したい
まとめ
脂質異常症は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多い病気です。
しかし、「コレステロールが高い」という数字だけで必要以上に心配する必要はありません。
現在では、年齢や血圧、糖尿病、喫煙歴、腎機能、心血管疾患の既往などを総合的に評価し、その方に合ったLDLコレステロールの目標値を決める時代になっています。
また、近年ではLp(a)(リポ蛋白(a))という、遺伝的な動脈硬化リスクの指標も注目されています。一生に一度測定することが勧められています。
健康診断の結果は、「異常」か「正常」かだけで判断するものではなく、ご自身の将来の健康を考えるための大切な手がかりです。
当院でも、日本語で健康診断結果を一緒に確認しながら、生活習慣の見直しや必要な追加検査、治療についてご相談いただけます。また、ご希望に応じてLp(a)測定の必要性について
もご説明いたします。
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