【連載】ウィーンで歳を重ねるということ③日々の暮らしが、脳を支える―運動・睡眠・食事・人とのつながり―
- Dr. Rie Iwaki

- 6月24日
- 読了時間: 3分
「認知症は、予防できるのでしょうか」
ときどきこうしたご質問を受けることがあります。
すべてを防ぐことはできません。
けれど最近では、認知症のリスクの一部は、生活習慣や体の状態、社会的なつながりと関係している可能性があることが分かってきています。
つまり、認知症は「脳だけ」の問題ではなく、日々の暮らしともゆるやかにつながっているということです。
たとえば、
・血圧や血糖を整えること
・体を動かすこと
・睡眠を大切にすること
・食事のバランスを意識すること
・人とのつながりを持つこと
どれも特別なことではありません。
日常の中にある、小さな選択ばかりです。
運動というと、少し身構えてしまう方もいるかもしれません。
けれど、必ずしも特別なスポーツを始める必要はありません。
少し歩く。階段を使う。外に出て光を浴びる。
そうした小さな動きも、積み重なれば大切な生活習慣になります。
睡眠もまた、脳の健康を考えるうえで大切な要素です。
眠っている間、脳はただ休んでいるだけではなく、日中にたまった老廃物を処理し、次の日に備えて整えていると考えられています。
「よく眠ること」は、贅沢ではなく、体と脳を守るための基本でもあります。
食事についても同じです。何か一つの食品で認知症を防げるわけではありません。
けれど、野菜、魚、豆類、良質なたんぱく質などを含むバランスのよい食事は、血管や代謝の健康を通して、脳にも関わってきます。
そしてもう一つ、忘れられがちなのが人とのつながりです。
会話をすること。誰かと食事をすること。予定を持つこと。人の中に出ていくこと。
それらは単なる気分転換ではなく、脳にとって大切な刺激でもあります。
ウィーンで暮らしていると、日本にいた頃とは生活のリズムが少し変わることがあります。
日照時間の変化。
食材の違い。
移動の仕方。
人と会う頻度。
そうした環境の違いの中で、自分に合った暮らし方を少しずつ整えていくことも、歳を重ねるうえで大切なことなのかもしれません。
大きく変える必要はありません。
今日は少しだけ歩いてみる。
寝る前の時間を少し整えてみる。
誰かに連絡してみる。
食事に一品、野菜や豆類を足してみる。
そのくらいの小さなことで十分です。
認知症予防という言葉は、少し大きく聞こえるかもしれません。
けれど実際には、未来のために今の生活を少し整えること。その積み重ねに近いのだと思います。
ウィーンで歳を重ねていく中で、医療にできることは確かにあります。
けれど同時に、毎日の暮らしの中にある小さな選択も、静かに積み重なっていきます。
その積み重ねが、これからの時間を少しだけ心地よいものにしてくれる。そんなふうに考えてみてもよいのかもしれません。
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