top of page

骨粗鬆症 ― 骨密度検査はいつから?― 痛くなってからではなく、「骨折する前」に考えたい骨の健康 ―

9月21日
読了時間: 12分

「骨粗鬆症って、もっと高齢になってからの病気ですよね?」


そう思っている方は多いかもしれません。


実際、骨粗鬆症は年齢とともに増え、特に女性では閉経後にリスクが高くなります。


でも、骨粗鬆症で少し難しいのは、

骨が弱くなっていても、ほとんどの場合、痛くもかゆくもない

ということです。


血圧なら測れば分かります。血糖やコレステロールなら健康診断の血液検査で気づくことがあります。


ところが骨は、静かです。


そして、

「転んで手首を骨折した」

「背骨がいつの間にかつぶれていた」

「家の中で転んだだけなのに大腿骨を骨折した」

というところで、初めて骨粗鬆症が見つかることがあります。


だからこそ骨粗鬆症は、「骨折してから治療する病気」ではなく、「骨折する前にリスクに気づきたい病気」なのです。




そもそも骨粗鬆症とは?


骨は、一度作られたらそのまま一生使い続けるものではありません。

古い骨を壊し、新しい骨を作るという「骨のリモデリング」を繰り返しています。


若いうちは骨を作る力が十分ありますが、年齢とともに骨量は少しずつ減少します。特に女性では、閉経に伴ってエストロゲンが減少すると骨吸収が進み、骨量が低下しやすくなります。


骨粗鬆症とは、単に「カルシウムが足りない状態」ではありません。

骨量が減り、骨の質も低下することによって骨の強度が落ち、骨折しやすくなった状態です。


代表的なのが、

  • 背骨(椎体) 

  • 大腿骨近位部(股関節の付け根) 

  • 手首 

  • 上腕骨 

などの骨折です。


中でも高齢になってからの大腿骨近位部骨折は、入院や手術だけの問題ではありません。

歩く力が低下し、それまで一人でできていた生活が難しくなることもあります。


ですから骨粗鬆症治療の本当の目的は、検査の数字を良くすることではなく、

これからも自分の足で歩き、自分らしい生活を続けるために、骨折を防ぐこと。

私はここが一番大切だと思っています。



「骨が弱くなっている」ことには気づける?


残念ながら、骨粗鬆症そのものには典型的な初期症状がほとんどありません。


ただし、

「若い頃より身長が低くなった」「背中が丸くなってきた」「急に背中や腰が痛くなった」

という場合には、椎体骨折が隠れていることがあります。


特に、「転んだわけでもないから骨折ではない」とは限りません。


骨がかなり弱くなっていると、日常的な動作でも椎体骨折を起こすことがあります。


また、50歳以降に立った高さ程度からの転倒など、通常なら骨折しない程度の力で骨折した場合(脆弱性骨折)は、「運が悪くて折れただけ」と終わらせず、その背景に骨粗鬆症がないか考えることが重要です。



骨密度検査は、何歳から受ければいい?


これは診療でもよく聞かれる質問です。

そして答えは、

「全員が同じ年齢から」ではありません。


オーストリアでは、50歳未満の健康な人に一律の骨密度検査をすることは推奨されていません。50歳以降はまず個人の骨折リスクを評価し、必要に応じて骨密度検査を行うという考え方です。オーストリアの公的健康情報では、女性65歳以上、男性70歳以上でリスク因子がある場合などもDXAの代表的な適応として挙げられています。


つまり、

「50歳になったから、とりあえず全員DXA」

ではありません。


一方で、年齢が若くてもリスクが高ければ検査を考えます。


たとえば、閉経が早かった方、過去に脆弱性骨折がある方、両親に大腿骨近位部骨折歴がある方、低体重の方、喫煙、過度の飲酒、長期間のステロイド治療、関節リウマチ、甲状腺・副甲状腺疾患、吸収不良を起こす消化器疾患など、骨に影響する病気や薬剤がある場合です。


年齢だけではなく、「その人の骨折リスクを見る」。

これが現在の考え方です。



日本ではどうなの?


ここは、日本とオーストリアで少し違っていて興味深いところです。

日本では市区町村が行う骨粗鬆症検診として、

40・45・50・55・60・65・70歳の女性

を対象に、問診と骨量測定を行う制度があります。


つまり日本では、女性については40歳から5年ごとの「節目年齢」で骨の状態を確認する仕組みがあります。


ただし、これは日本の自治体によるスクリーニング制度の話であり、「40歳になった女性は全員DXAを受けるべき」という意味ではありません。


実際、検診で用いられる骨量測定法はDXAだけとは限りません。


一方オーストリアでは、年齢ごとの一律の骨粗鬆症検診というより、年齢+個人の骨折リスクを評価して、必要な人にDXAを行うという色合いが強くなっています。


このため、

「日本では骨密度を測っていたのに、オーストリアのVorsorgeuntersuchungには入っていないの?」

と思われる方もいるかもしれません。


これは単純にどちらが良い悪いということではなく、スクリーニング制度の設計が違うのです。



DXA(DEXA)って、どんな検査?


骨粗鬆症の診断で標準となるのが、

DXA(Dual-energy X-ray Absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)

による骨密度測定です。


一般には腰椎と大腿骨近位部を測定します。


検査は寝た状態で行い、痛みはなく、数分程度。放射線量も通常のX線検査よりかなり少ない検査です。


オーストリアではKnochendichtemessungと呼ばれます。


医師からの紹介(Zuweisung)があり医学的適応が認められる場合、契約医療機関での検査費用は公的医療保険の対象になります。


結果でよく目にするのがT-Scoreです。


一般的には、

-1以上:正常-1~-2.5:骨量減少(Osteopenie)-2.5以下:骨粗鬆症

が一つの目安になります。


ただし、ここで大切なことがあります。


T-Scoreだけで、その人の骨折リスクのすべてが分かるわけではありません。

「-2.5じゃないから大丈夫」とは限りません

ここはぜひ知っておいていただきたいところです。


骨折するかどうかは、骨密度だけでは決まりません。

年齢、過去の骨折、家族歴、体重、喫煙、飲酒、ステロイド治療、転倒リスクなど、いろいろな要素が関係します。


そのため現在は、骨密度だけを見るのではなく、

「この人が今後骨折するリスクはどのくらいなのか」

を総合的に評価します。


その一つがFRAX®です。

年齢、性別、BMI、骨折歴、両親の大腿骨近位部骨折、喫煙、ステロイド、関節リウマチ、飲酒などを組み合わせて、将来の骨折リスクを推定します。


オーストリアの2024年ガイドラインでも、FRAXを用いた骨折リスク評価が診断・治療判断の重要な要素になっています。


ですから、

「骨密度が-2.3だから、まだ骨粗鬆症ではない。何もしなくて大丈夫」

とは必ずしも言えません。


逆に、数字だけを見て必要以上に怖がる必要もありません。

大切なのは、数字と、その人全体のリスクを一緒に見ることです。



血液検査だけでは分からないの?


これもよくある誤解です。

健康診断で、

「カルシウムは正常でした」

と言われても、それだけで骨粗鬆症がないとは言えません。


血液中のカルシウム濃度は身体によって厳密に調節されているため、骨量が減っていても正常であることは珍しくありません。


骨粗鬆症を疑った場合の血液検査は、

「血液検査で骨粗鬆症を診断する」

というより、

骨が弱くなる別の原因が隠れていないか調べる

意味があります。


たとえば、カルシウム・リン、腎機能、肝機能、ALP、ビタミンD、甲状腺機能などを、病歴に応じて確認します。必要に応じて副甲状腺ホルモンや骨代謝マーカーなどを追加します。


つまり、

血液検査が正常=骨も大丈夫

ではありません。



女性は「更年期」が一つのタイミング


女性にとって骨の健康を考える大切な時期の一つが、更年期・閉経前後です。


女性ホルモンであるエストロゲンには、骨吸収を抑える働きがあります。

閉経によってエストロゲンが低下すると、骨量が減少しやすくなります。


だからといって、

「閉経した=骨粗鬆症」

ではありません。


もともとの骨量、体格、遺伝、食事、運動、喫煙、飲酒、病気や薬などによってリスクはかなり違います。


でも更年期は、

「骨についても一度考えてみよう」

という良いタイミングです。

参考記事→「更年期」



男性にも骨粗鬆症はあります


骨粗鬆症というと「女性の病気」というイメージがあります。

確かに閉経後女性に多い病気です。


でも、男性にも骨粗鬆症はあります。


しかも男性の場合、「自分は対象ではない」と思って検査や診断が遅れることがあります。


年齢に加えて、低体重、喫煙、過度の飲酒、ステロイド治療、性腺機能低下、慢性疾患、過去の骨折などがあれば、男性でも骨粗鬆症を考えます。


日本の自治体による骨粗鬆症検診が40~70歳の女性を対象としているのに対し、臨床上の骨粗鬆症リスク評価は当然ながら男性にも必要です。厚労省の検討会でも、男性の骨粗鬆症と骨折後の予後の重要性が指摘されています。



骨を守るために、今からできること


骨粗鬆症予防というと、

「カルシウムを飲めばいい?」

と聞かれることがあります。

もちろん、カルシウムは大切です。

でも、骨の健康はカルシウムだけではありません。


十分な栄養、タンパク質、カルシウム、ビタミンDに加えて、身体を動かすこと、筋力を保つこと、そして転ばない身体を作ることが大切です。

特に、歩行や階段などの荷重運動、そして筋力トレーニングやバランストレーニングは重要です。


ここで、先日Stadtwanderwegを歩いた時のことを思い出します。

「健康のために7km歩こう」

と思うと少し大変ですが、

友人と話しながら森を歩き、スタンプを探していたら、結果として7km歩いていた。


骨にとっても、「特別な健康活動」だけが運動ではありません。

散歩する。

階段を使う。

旅行する。

庭仕事をする。

踊る。

そして、ときどき森を歩く。

日常生活の中で身体に適度な負荷をかけることが、筋肉だけでなく骨を守ることにもつながります。



ビタミンD ― ウィーンでは気になるけれど……


ウィーンで暮らしていると、

「冬は日照時間が短いし、ビタミンDを飲んだ方がいいですか?」

という質問も出てきます。


ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の健康に重要です。オーストリア骨・ミネラル代謝学会も、ビタミンD不足が骨折リスクと関連することを示しています。


ただし、

「骨粗鬆症が心配だから、とりあえず全員が高用量のビタミンDサプリを飲む」

という話ではありません。


食事、日光曝露、年齢、生活環境、病気などによって必要性は異なります。

特に高用量を自己判断で長期間摂取するのではなく、リスクに応じて考えるのがよいでしょう。


カルシウムも同様で、基本はまず食事から十分に摂ることを考え、不足する場合に補充を検討します。



もし骨粗鬆症と診断されたら?


「骨粗鬆症と言われたら、もう骨は元に戻らないのですか?」

と不安になる方もいます。


でも、骨粗鬆症には骨折リスクを下げるための有効な治療があります。

治療薬には、骨が壊されるのを抑える薬と、骨形成を促す薬などがあります。

ビスホスホネート、デノスマブ、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、副甲状腺ホルモン関連薬、ロモソズマブなど、選択肢は一つではありません。

どの薬が適しているかは、年齢、性別、骨密度、これまでの骨折、今後の骨折リスク、腎機能、他の病気などによって変わります。


そして、ここでとても大切なのが、

骨粗鬆症の薬を自己判断で中断しないこと。

薬によっては中止後の骨量低下や骨折リスクを考えて、次の治療へ適切につなぐ必要があります。


「何年飲むのか」「いつ休薬できるのか」も薬によって違います。

骨粗鬆症は、薬を処方して終わりではなく、骨折を防ぐために長期的に付き合っていく病気です。オーストリア骨・ミネラル代謝学会も、多くの患者で持続的な骨折リスクを伴う慢性疾患として位置づけています。



骨折を防ぐには、「骨」だけを見ない


そして、歳を重ねてからの骨折予防にはもう一つ大切なことがあります。

転ばないことです。

どれだけ骨密度を改善しても、転倒が多ければ骨折のリスクは残ります。

筋力、バランス、視力、靴、住環境、睡眠薬などの薬剤、血圧低下やめまい――転倒にはさまざまな原因があります。

だから骨粗鬆症を考える時には、

「骨を強くする」+「転ばない身体と環境を作る」

の両方が大切です。

これは、高齢になってから急に始めるものでもありません。

今から歩く。

筋肉を保つ。

食べる。

外に出る。

そういう毎日の積み重ねが、将来の自分の身体を支えてくれます。



「まだ若いから」ではなく、一度自分のリスクを考えてみる


骨粗鬆症についてお伝えしたいのは、

「みんな早く骨密度検査を受けましょう」

ということではありません。


検査には、受ける意味のあるタイミングがあります。


一方で、

「まだ60歳だから」

「男性だから」

「痛くないから」

「血液検査のカルシウムが正常だから」

という理由だけで、骨粗鬆症を除外することもできません。

年齢、閉経、これまでの骨折、家族歴、体格、持病、薬、生活習慣。

そうしたものを一度並べて、

「私は骨密度を測った方がいいのかな?」

と考えてみる。

それで十分です。



ウィーンで歳を重ねるということ


骨のことを考えると、

「歳を取ると骨が弱くなる」

という少し寂しい話に聞こえるかもしれません。

でも、私が骨粗鬆症について考える時に思うのは、むしろその逆です。


これからも歩きたい。

旅行したい。

買い物に行きたい。

友人と出かけたい。

階段を上りたい。

知らないウィーンを歩いてみたい。

そのために、骨と筋肉を守る。


骨粗鬆症の予防は、単に「骨折しないため」だけではなく、

これから先も、自分の足で自分の生活を楽しむための準備

なのだと思います。


骨は静かなので、普段はなかなか意識しません。

だからこそ、更年期や健康診断、節目の年齢などに、

「そういえば、私の骨は大丈夫かな?」

と一度思い出してみてください。


歳を重ねることを怖がるためではなく、

これからもやりたいことを続けるために。



参考情報

この記事は2026年9月時点の情報に基づいています。


※過去に軽い転倒などで骨折したことがある方、急な背部痛や身長低下がある方、長期間ステロイドを使用している方などでは、年齢にかかわらず個別の評価が必要になることがあります。


コメント


Ordination Dr. Rie Iwaki

Ordination Dr.Rie Iwakiのロゴ。優しさと信頼を大切にした医療を象徴しています。

Dr. med. univ. Rie Iwaki PhD

Elterleinpl.13/8/R01
1170 Wien

  • 2時間までの無料駐車場をご用意

  • 公共交通機関でのアクセス良好

  • バリアフリー対応

  • Elterleinplatz 13/ Stiege 8 /1. Stock

  • ARZTのベルを押しながら、ドアを引いてください。

  • 日本の2階になります。上がって奥左手にお進み下さい

  • 『Praxis』の表示が目印です

診療時間

​​

完全予約制
平日:15:30以降
土曜日:予約枠に応じて対応

​​​​​​

ウィーン市内往診・時間外・病院付き添い可能な範囲で対応しております​

​

メールで診察希望のご連絡をください

 

診察希望内容、生年月日、健康保険番号(お持ちの方)、住所、お電話番号、薬剤アレルギーの有無、内服薬もあわせてお知らせください

bottom of page