歩くことと、こころの健康
- Dr. Rie Iwaki

- 4月19日
- 読了時間: 3分
―「少しだけ動く」ことの意味―
「運動した方がいいのは分かっているんですが…」
診察室でよく聞く言葉です。
分かってはいるけれど、なかなか続かない。
忙しさや疲れの中で、後回しになってしまう。
とても自然なことだと思います。
実は私自身も、どちらかというと“家っ子”で、きっかけがなければ一日中家にこもっていられるタイプです。
誰かに誘われたり、予定があったりしないと、そのまま外に出ないまま一日が終わってしまうこともあります。
だからこそ、「運動の大切さ」と「実際の難しさ」の間にある距離は、日々感じています。
そんな中で、興味深い研究結果が報告されています。
1日の歩数と、うつ症状との関連を調べた研究では、歩数が増えるほど、うつのリスクが低下する可能性が示されました。
特に、
・1日あたり1,000歩増えるごとに、リスクが少しずつ低下・7,000歩以上歩いている人は、7,000歩未満の人と比べて 約30%程度、うつのリスクが低かった
と報告されています(JAMA Network Open, 2023)。
もちろん、これは「歩けば必ずうつにならない」という話ではありません。
体調や環境、ストレスなど、さまざまな要因が関わります。
けれど少なくとも、日々のちょっとした身体活動が、こころの状態にも影響している可能性があるということが、少しずつ分かってきています。
ここで大切なのは、「どれくらい運動するか」よりも、「少しでも動くこと」なのかもしれません。
7,000歩と聞くと、多く感じるかもしれませんが、
一駅分歩く・少し遠回りして帰る・買い物に歩いて行く
そんな日常の中の動きでも、少しずつ積み重なっていきます。
「まとまった運動をしなければ」と思うと、どうしてもハードルが上がってしまいます。
けれど、「あと1,000歩だけ増やしてみる」と考えると、少し現実的になるかもしれません。
ウィーンでの生活は、街を歩くことが比較的しやすい環境でもあります。
公園や緑が多く、少し外に出るだけで空気が変わるのを感じることもあります。
そうした環境を、無理のない範囲で利用してみるのも一つの方法です。
運動は、「やらなければならないもの」として考えると、少し苦しくなってしまいます。
けれど、気分を少し整えるための手段のひとつとして捉えてみると、見え方が変わることもあります。
「今日は少しだけ外に出てみる」
それくらいの小さな一歩でも、十分に意味があるのかもしれません。
完璧である必要はありません。
続かない日があってもいい。
それでもまた、少しだけ動いてみる。
その積み重ねが、こころと体の両方に、静かに影響していくのかもしれません。
※参考身体活動量と抑うつリスクに関するシステマティックレビュー(JAMA Network Open 2023)
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